対立を解消する方法

概要

相反する行動、手段、意思決定の衝突を「対立」と定義します。妥協点を探ることで状況は前に進むかもしれません。しかし、根本原因を解消しない限り、問題はなくなりません。このようなとき、「クラウド」を用いて考えることで、Win-winの状況をつくることができます。

「行動DとD’が対立しているとき、要望BとCを両立させるにはどうすればよいか」が解くべき問題となります。

用法

上司から、「商品化プロジェクトが忙しいのは分かるが、働き方改革もやりたい」と言われたとします。さて、このようなときに、何をどのように考えていけばよいでしょうか。クラウドを適用すると、次の(1)~(4)の順番で考えることになります。

(1) 問題を定義する

対立していることは何でしょうか。ここでは、商品化プロジェクトを進めることと働き方改革を実行することです。どちらも人と時間の確保が必要になり、リソースの奪い合いになってしまいます。よって、働き方改革を実行する(D)と今すぐはムリ(D’)が対立することになります。

要望(両者をその行動に駆り立てる強い動機)は何でしょうか。例えば、Dの要望として、新たな製品やサービスを開発したい(B)があり、D’の要望として、商品化プロジェクトを優先したい(C)があるとします。

BとCの両者が共有できる目標は何でしょうか。ここで、目標とは、対立が解消された結果として起こる状況のことです。ここでは、組織目標を目指して活動したい(A)としました。一部の人間だけが働き方改革をしてもその効果は限定的です。組織の構成員による全員参加が改革実現の前提になります。

(2) 定義を評価する

クラウドを音読し、意味が通ることを確認します。左から右の箱に向けて、「~するためには、~なくてはならない」という言葉を補って読みます。

それぞれ、新たな製品やサービスを開発するためには(B)、働き方改革を実行しなくてはならない(D)、プロジェクトを優先したいので(C)、今すぐに働き方改革を実行するのはムリ(D’)、組織目標を目指して活動したいので(A)、新たな製品やサービスを開発したい(B)、組織目標を目指して活動したいので(A)、プロジェクトを優先したい(C)となります。

(3) 分析を深める

箱と箱のつながりを示す仮定を、例えば、「Bであるためには、Dでなくてはならない。なぜなら…」という言葉を補いながら書き出します。

「新たな製品やサービスを開発するためには(B)、働き方改革を実行しなくてはならない(D)。なぜなら、生産性を上げ、人や時間の余力を高めることが求められているから」、「プロジェクトを優先したいので(C)、今すぐに働き方改革を実行するのはムリ(D’)。なぜなら、働き方改革の時間確保が厳しく、負荷になってしまうから」、「組織目標を目指して活動したいので(A)、新たな製品やサービスを開発したい(B)。なぜなら、既存事業の推進だけでなく、新規事業の創造が社会貢献につながるから」、「組織目標を目指して活動したいので(A)、プロジェクトを優先したい(C)。なぜなら、組織の直近の大きな仕事はプロジェクトをやり切ることだから」これらをまとめたのが上図です。

(4) 解決策を見つける

Win-winの解決策を探します。直感的な解決策を探してもよいですし、見つからない場合は、システマティックな解決策として、要望と行動の間の仮定が思い込みではないか、常に必要なのか、正しいわけではないのではないかと検証し、代替となる選択肢を考えます。

プロジェクトを優先させたまま働き方改革を実行できるのか、働き方改革を実行しないと新製品や新サービスは開発できないのかを考えると、働き方改革とは何かを問うことになるでしょう。改革の中身が決まっていないうちは、必要なリソースを見積もることもできません。つまり、そもそも働き方改革で何をすることが現在の組織にとって大事なのかを考えることなくして、要望BとCの両立はできないのではないでしょうか。

現状、プロジェクトが佳境なのであれば、数名で働き方改革のコンセプトを検討してもよいですし、無理のない時期に全員参加型の活動を企画してもよいでしょう。

効能

Win-win、つまり、対立している両者がともに要望を満たすことができる状態を見出せます。これは、あきらめ(一方が主張を取り下げる)、強制(一方が他方に主張を押しつける)、綱引き(両者とも主張を譲らない)、妥協(両者が中間点であきらめる)のいずれとも異なります。

注意

対立解消の解決策は、あらかじめ用意されているわけではないので、当事者間で納得のいく策になっているかを確認するのを怠ってはいけません。そのためにもクラウドで図示し、問題を外在化しておくことは重要になります。

参考文献

クラウドの出典に興味がある読者には文献[1]を、楽しく読んで実践したい読者には文献[2]をお勧めします。

[1] エリヤフ・ゴールドラット, 「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」, 2001, ダイヤモンド社
[2] 岸良裕司, 「考える力をつける3つの道具」, 2014, ダイヤモンド社
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